前回、5/25に開催したおけいこクラブ「女と男の万葉集」が
好評で、なんとおけいこクラブ初の連続開催となりました!
全員が古典好きというわけでもないのに
なぜ?といえば
ひとえに教える丸山ちはや先生の魅力です!
それはまるで一人芝居を見ているかのような熱演で2時間ノンストップ!
さて、第2回のテーマは
「1200年前の高級ホステス」について
前回、
「宮中や高級官僚の宴席に地方出張までした
容姿端麗、才色兼備の高級ホステスがいた」
という話を聞いて、リクエストしました。
▼ちなみにこちら、現在の高級ホステス「樹里杏」の百合子ママです
今回、会場提供していただきました。
「采女(うねめ」」または「遊行女婦(うかれめ)」と言われた彼女たちは
今でいう県知事クラスの娘や姉妹たち。
当時、服属のしるしとして、奈良の都へ差し出されていたそうです。
花嫁修業といえなくもないけれど
一種の人質ですね。
天皇直属の女官
「容姿端麗」な子女たちが日本中から集められているわけですから
そりゃ、男なら手を出したくなるもの
が、彼女たちに手を出せるのは天皇だけで
口説いたり、ましてや男女の関係になるのはご法度。
牢屋に入れられたり、死罪だったようです。
▼「采女」の絵も見せてくれました。やっぱり美人です
まあ、それでも手をつける輩はいたそうで
(たぶん、死罪になった男はいっぱいいるんだろうと、ちはや先生)
なかでも
安貴王(あきのおおきみ)という位の高い男が、正妻がいるにも関わらず
采女と関係を結んだそうで、→「不敬之罪」
でも地位が高いから、死罪を免れ、国へ退去させられた。
そして、女々しく、会いたい、会いたいと采女への未練をいくつも歌っています。
1200年前の「女々しくて」がこれ
↓
遠妻の ここにし在らねば 玉桙の 道をた遠み 思ふそら
安からなくに 嘆くそら 苦しきものを み空行く 雲にもがも 高飛ぶ 鳥にもがも
明日往きて 妹に言問ひ 我が為に 妹も事無く 妹が為 我も事無く 今も見る如 副ひてもがも
【訳】都の妻(正妻でなく采女のこと)に会いたい、けど道が遠くて会いにいけない。
雲になりたい、ああ空を飛ぶ鳥になりたい、
明日、訪ねていって妻に会い、私も妻も咎められず、ぴったりと寄り添いたい
1200年前も今も
ポエマーは雲に乗りたいとか鳥になりたいって歌うものなのねーー。
しかし、この男、身分が高かったおかげで死罪を免れたのに
こういう女々しい歌をたっくさん残している・・。
呑気なもんです。
さて、この他にも
采女の魅力にやられた男たちは数知れず。
富山で単身赴任中に、采女の左夫流児(さぶるこ)に夢中になってしまった部下を
大伴家持が諫める歌もあって
それもおもしろい
↓
里人の見る目恥づかし左夫流児に
さどはす君が宮出で後しり風ふり
【訳】左夫流児に熱いれあげて左夫流児の家から出勤する君を
里の人が笑っているかと思うと俺も恥ずかしいぜ
采女は通常、任期は2年で
その後は天皇に見初められてそのまま宮中に残るか
箔をつけて故郷へ帰り
いいとこへ嫁にいくかだったそうですが
ここで、最強の「高級ホステス」の話をひとつ
▼天皇が好みの采女を物色する目です
葛城王(かずらきのおおきみ)という皇族が陸奥の国へ来たとき
そのおもてなしが気に食わず、とうとう怒り出してしまった。
その時に もと采女だった女が
当時、奈良の都でいちばん流行っていた歌を詠んだ。
そこから葛城王は機嫌がよくなって、国難を免れたという話
その時、詠んだ、当時いちばん流行っていた歌がこれ
↓
↓
安積山
影さへ見ゆる山の井の浅き心を
我が思はなくに
【訳】安積山の澄んだ泉がはっきり姿をうつすように私の心も澄んでいます。
私は決して浅い気持ちであなたのことを思っているのではありませんよ。
片手でお酒を注ぎながら、もう片手で葛城王の膝を叩いて
この歌を詠んだ・・・らしいです。
もう、見えるようだわーーー!
今でいうなら
銀座の高級ホステスだった女がその教養と英知で
故郷の危機を救ったっていう話なのよ~!!
というわけで1200年前のNO.1ホステスオブザイヤーは
間違いなくこの時の采女さんなのですが
名前が残っていないそうです。
なんでもこの時代に名前を教えるというのは
身を任せますというぐらい
大変なことだったようで、
簡単には名前を教えなかったようですね。
というわけで
まるで無声映画の弁士のような、丸山ちはや先生のトークで
すっかり1200年前の万葉世界を旅した私たち
ふと気がついたけど
これって、「大人のための読み聞かせ」ではないだろうか?
ちはや先生、参加してくださった皆さま、ありがとうございました。
第3弾のリクエストを既に受けております。
月の美しい秋がいいかなあ・・
▼シトロンさんのプリンを食べつつ、おしゃべりは続く