去る11月21日(水)、白金豚の農場を見学してまいりました。
私が㈱のびあを立ち上げたとき、実現したいことのひとつが「生産地を訪ねること」で、
源喜屋さんがのびあの協賛加盟店になっていただいた時から、「豚舎の見学がしたいなあ」とずっと思ってきたのでした。
ところが、ここに立ちはだかるのが「防疫」の2文字。
白金豚を生産する高源精麦㈱のHPやブログにも「豚舎は社員であっても担当者以外は絶対立ち入り禁止!!」とあります。
それでもお願いしてみること数回・・・・そして今回、やっと特別に許可をいただきました。
行ってみてわかったこと。
それは「食の安全」 その言葉のもつ意味と責任の重さ!
あらためて見学を許可してくださった高源精麦㈱さまに御礼申し上げます。
さて、そんな貴重な経験をすることになった女子100会員は
高橋さん・三上さん・佐々木さんの3名。
ここで普通なら3名の顔写真をバーンと行きたいところですが、農場で写真撮るのに夢中で
帰ってきてみたらこれしか3人の写真がない・・・。
目しかでてませんが、写真右から、高橋さん・佐々木さん・三上さんです。
今日は農場見学が主目的ですが、その前にまず一行はこちら、花巻の源喜屋本店に立ち寄りました。
「さっそく食べてるじゃないの?」と言われそうですが、
昼食に頂いておりますのは「白金豚ヒレステーキ定食」です。
はじめて白金豚のヒレを食べましたがすごーーく柔らかい!
焼き加減も絶妙で、うっすら美しいピンク色。
そしてヒレ肉の本来の味を堪能すべく、味付けはうす味。
ネギ塩にレモン汁でさっぱりといただきました。
おいしゅうございました。
その後、白金豚を生産する高源精麦株式会社の高橋誠社長より
直々でレクチャーしていただきました。
こちらが社長です。
まずは「白金豚」の名前の由来から・・。
もともと精麦を生業としていた高源精麦㈱が養豚部を開設したのは昭和39年。
「白金豚」の商標登録をしたのは平成13年だそうです。
「養豚業というのはたとえば臭いなど地域の方の理解と応援なしにはできない仕事です。
ですので、地域に愛される名前、
そして花巻の歴史と風土をすぐに連想できるような名前
がいい。」 と思案する高橋社長が出会ったのがこの一冊です。
宮沢賢治の「フランドン農学部の豚」という小説の次の一節です。
「ずいぶん豚というのは奇体なことになっている。水やスリッパや藁を食べて、それをいちばん上等な、脂肪や肉にこしらえる。
豚のからだはまあたとえば生きた一つの触媒だ。白金と同じことなのだ。」
※商標登録をするにあたって宮澤賢治の御子孫の方から許可をいただいているそうです。
※文中の「スリッパ」は昔の藁で編んだスリッパです。
このエピソードにすかさず会員の三上さんが
「社長は何学部出身ですか?」
「文学部です」「さすが~」 などと盛り上がり、座学が始まってすぐに話しは脱線。
その後も、「豚肉はなぜ生食はいけないのか?」などの質問があがり、丁寧に答えていただきながら座学は続きました。
そして私は知らなかった。
白金豚の親はずっと白金豚で、
代々、白金豚から白金豚が生まれるものだと思っていたのですが、
お母さんとお父さんは別にいて、その交配種が白金豚なんですね。
お母さんはLWというランドレースと大ヨークシャーの混血種
お父さんはハークシャー種という黒豚
いわゆる豚の肉質はこの交配によって作られるそうで、
交配種をどうするかが各ブランド豚の命であり、オリジナリティーなんだそうです。
ちなみに、
「なぜずっと親が白金豚ではいけないのか?」 というと
「人と同じで血が濃くなると遺伝的にはよくない」 のだそうです。
そして白金豚は
豚の分娩舎と離乳舎を別の農場で分ける「ツーサイトシステム」で飼育されています。
(ですので今日、見学する農場も2カ所。)
その理由は
「人間の赤ん坊が1歳を過ぎると母親の免疫が切れて病気しやすくなるのと同じで、
豚も離乳期は弱いんです。
なので生後20日前後の子豚は成豚と離して飼育することによって、健康に育つ」
からだそうです。
気が付いたら予定時間を30分もオーバーしておりました。
急いで農場へ車を走らせます。
まず第一農場から見学。
「繁殖と分娩のための農場で、豚の産婦人科だと思ってください。」 と社長。
ここでまず私たちはこの白装束に着替えです。
もはや目しか出ておりません。
足元も注目してね。
靴の底が豚舎内につかないように、靴ごとすべてビニール袋で覆います。
なぜここまで重装備か?というと
「豚の体温は人間ともっとも近くて菌をもらいやすい」 そうで
もし私たちの誰かが風邪をひいててそれが一匹に移ったら
ひいてはそれが豚舎にいる豚全てに移るかもしれないわけで、
最悪の場合、豚舎の豚全てが死ぬことにもなりかねない。
「99%安全でも残り1%のため」 なんですね。
だから社員でも立ち入り禁止の聖域にしているわけです。
これは予想以上に大変なことを頼んでしまったのね・・・と初めて自覚する私でした。
さて着替えも終わり、
一行は第一農場の責任者である関さんに続いていよいよ豚舎へ。
豚舎の入口でさらに足を消毒します。
そして豚舎に入るやいなや犬に激しく吠えられた私たち。
ここにいる母豚を守る番犬「弁慶」くんです。
餌を奪いにきた熊に間違えられた?
が、関さんが「シィー」と指さしたらとたんに大人しくなってくれました。
晴れて弁慶くんの審査をパスした私たちはさらに奥へ。
いました、いました。
お母さん豚、デカイです。
たしか250キロと聞いたような。大きいです。
そして赤ちゃん豚がたくさん、お乳を飲んでいます。
母豚には乳首が14個あり、一度に10匹前後を産むそうですが、
おっぱいは前の方が出がいいそうで、
そのままでは前をキープできた豚とうしろになってしまった豚と成長に差がでてしまう。
ということで、関さん、ヒョイヒョイと豚の位置を交換。
と、次の瞬間、びっくり。
とある母豚から、赤ちゃん誕生。
まったく何のいきみもなく、
本当に「ぽろん」という感じでございました。
カメラ間に合いませんでした。
こちら本当にたった今、誕生したばかりの赤ちゃんですよ。
ほにゃほにゃでしょ?
体温の低い赤ちゃんは、
関さんの手によって、奥の保育器のような暖かい場所に移動させられますが、
本能なのかなあ。
すぐにお母さんのおっぱい探している感じでした。
あまりにぽろんと生まれてしまったので、驚いてたら
関さんいわく「豚は安産ですよ」 とのこと。
こちらは、やがては白金豚のお父さんになる黒豚専門の赤ちゃんです。
黒豚は強そうに見えますが、実は弱いそうで、飼育にとても手がかかるのだそうです。
うーなんてかわいい。
けど私たちは決して手をふれてはいけません。
さて産科を見学した私たちは
少し離れた「繁殖豚舎」へ
ここは豚の合コン場とでもいいましょうか。。
こちらに整然と並んでいるのが女性
その向かいに、男性。
メスを取り囲むようにしてオス・・というように配置されているのですよ。
こうしてお見合いさせるのですね。
本当に見合っています。
交配は、2/3が人口受精で1/3が自然な受精だそうで、
微妙な受精判定には、人間が使う妊娠検査薬を使うこともたまにあるそうです。
関さんいわく
「男で妊娠検査薬もって喜んでいるのは我々ぐらいかと思います」とのこと。
こうして母豚は、
1年にだいたい2.4回の割合で妊娠し、1回の妊娠期間は約115日間。
一度に出産するのが10匹以上、
これをだいたい生涯、13~18回もお産を繰り返すのだそうです。
それら全てを記録しているのが
こちらの用紙で
いわゆるカルテ兼履歴書です。
第一農場の500匹全てにこのカルテがあり、
関さんは、あちらこちらの豚に「よう!」と声をかけ、体調を気遣います。
その様子がとにかく優しいのだ。
「この方、豚だけでなく、きっと人間の世界でもモテるにちがいない・・・」
などどナイショ話をしながら記念写真。
こうして私たちは第一農場と関さんに別れを告げ
次に「第2農場」へと向かいます。
高橋社長いわく、第2農場は
「子豚の保育園です。
おそらくイメージ通りの牧歌的な風景だと思いますよ」
移動中ももちろんこの装束です!
誰ともすれ違わなかったけれど、
この格好で4人乗ってる車、
ぜひ正面から撮ってみたかったです。
つきました!第2農場へ。
あたりは黄色の絨毯でした。
きれい・・・・
私たちを迎えてくれた第2農場責任者の畑山さんです。
そして、ここでも私たちは先ほど同様、
新品の手袋と足を覆う新品のビニール袋を配布され、
目だけを出して農場内へ。
1回目に比べるとだいぶスピーディーに手袋も靴も装着できるようになりました。
畑山さんがこれまた、素朴で実直なお人柄でして
畑山さんが近づくと、子豚ちゃんがわーと
「待ってたよ~」って感じで
一斉に寄ってきます。
子豚ちゃんにとって「お父さん」なのかな?
第2農場はまさに子豚の保育園で、すごーくかわいい。
豚舎は広葉樹のおがくずをしいた大きな小屋で、
そのなかで自由に子豚たちが動き回っています。
手前の箱にえさ、反対側の奥にあるのが水です。
わざと離しているのは、こうして適度な運動をさせることにより、
豚本来の抵抗力を高めたり、適度な筋肉を作っているからなんだそうです。
こうして豚本来の抵抗力を高めることでワクチンや薬を使うのを極力抑えているそうです。
そしてもうひとつ白金豚の品質のカギが「餌」だそうで
「うちの豚は本当にいい餌を食べて育っていますよ~」
多くの豚の餌が遺伝子組み換えをした穀物を使用しているなかで
白金豚の餌は非遺伝子組み換えの指定配合飼料に拘り、
飲み水は奥羽山脈の湧水に釜石鉱山の鉱石をろ過したミネラルたっぷりの活性水
を使用しているそうです。
白金豚を最初に食べたとき、
「豚肉特有のくさみが全くない」ことにびっくりしたのですが
その秘訣は餌にあるそうで、餌を変えてしまえばくさみが出てくるそうです。
あの白金豚の上品な味わいは、
歴代の養豚スタッフの手によって試行錯誤の上、作られたブランドなんですね。
さて、第2農場で一行が目にとめたのはこちらの山。
これなんだと思います?
餌ではない。
なんとコーヒーの粉です!!
缶コーヒーのジョージアを作ったあとの粉なんですって。
同じ花巻市内にあるみちのくコカコーラさんからゆずられてるそうで、消臭対策とのこと。
子豚の豚舎は、そもそも広葉樹のおがくずを使用しているので全く臭くないのですが、
それでも消臭対策にこのコーヒーの山があちこちあります。
「地域の方々の協力と応援なしにはやっていけないのです」
という配慮のひとつがこのコーヒーの山なんですね。
初めて生産地を訪ねてみた今回の「白金豚農場見学」
ここ数年、「食の安全」が話題になりますが
最終的には、作っている「人」だと思ったりするんですよね。
ここ高源精麦㈱では
5000匹の一匹一匹を関さんや畑山さんをはじめとするスタッフの方々が
愛情もって育てていました。
白金豚の品質は
岩手の自然とスタッフの愛情と真心で作られていました。
そして品質と安心・安全を維持するために大変な苦労と企業努力をしていらっしゃいます。
ご案内してくださった高橋社長・関さん・畑山さん
大変貴重な体験が出来ました。
見学を許可していただき、本当にありがとうございました。