インタビュー

葬祭センター孝輝殿 及川義彦さま(36才)

葬儀屋さんの営業担当といったら、どのようなイメージをお持ちだろうか?

40代、50代のどちらかというと地味な男性?それとも映画「おくりびと」の本木雅弘さん?

最近でこそ、葬儀の世界も、女性や若い男性が活躍する場となってきたものの、今から14年前に、22才という若さでその世界へ飛び込んだ男性がいる。

社員100名を抱える県南大手の葬祭センター「孝輝殿」の仏具仕入担当者、及川義彦さんだ。


_孝輝殿入社のきっかけを教えてください。

東京の専門学校を卒業して帰ってきて、1年ぐらい今でいうフリーターをしていたんですが、

母と社長が知り合いで、それで面接を受けに来ました。

だから最初の就職先が孝輝殿です。

で、面接受けている最中に、社長が「忙しくなってきたから、手伝ってこい」と。

いきなり連れて行かれたお宅にあがると、仏さまが布団に寝かされている!!

これにはビックリしましたが、とにかく無我夢中でいわれたことだけ手伝った記憶があります。

だから葬儀屋さんのイメージも仕事内容も何もわからないまま、入社した感じです。


_22才といったら、よそのお宅を訪問する機会もなかったでしょうし、喪主さんや和尚さんなどかなり年の離れた方々ばかりですよね。大変だったんじゃないですか?

そうですね。とにかく全てが初めて体験することだらけでしたので、しきたりや礼儀作法も含めて覚えることに必死でした。

毎日が「与えられた仕事をやろう、覚えよう」の連続で、でもお客様からすれば相当珍しかったのでしょうね。

「若いのによくやってるね」なんて声かけられましたから。

ただ、私はどちらかというと、話し方も動作もゆっくりですので、焦ったりあわてていてもそうは見えなかったらしいです。

大変でしたけれど、まわりからは大変に見えなかったわけで、そこは良かったかもしれませんね。

今でも「ひょうひょうとしている」とよく言われます。


_仕事内容と葬儀担当の一連の流れを教えてください。

まず、「亡くなった」という連絡を受けて遺体の搬送に伺います。

そして、葬儀部が弊社では20名ほどおりますが、メイン担当とそれぞれの役割分担を決めます。メイン担当者はお寺と連絡をとって、ご遺族と話し合い、日程その他の打ち合わせに入ります。

そして日を改めて、納棺の儀(お化粧をして、装束を着せて、棺にご遺体をいれるまでの儀式)、お通夜(地域によってはお念仏)、火葬、ご葬儀、告別式、初七日法要(告別式と一緒に行うことも多い)、ご自宅に飾ってある祭壇をお引き取りに伺うまで約7日間がひと通りの葬儀の流れになります。


_補助的な仕事からご自身がメイン担当になったのはいつぐらいですか?

実は入社して1年ぐらいして自分から「営業担当させてください」と会社に志願したんです。そうしたら、まずお客様が話している方言が理解できなくて・・・。

祭壇の箱。その数はなんと合計30個!

すべてメモして会社へ戻ってから支配人や上司に言葉の意味を質問することから始まりました。

礼儀作法やしきたりも含めて「ひと通り覚えたな」と思うまで、4年はかかったと思います。でもこのひと通り覚えたような気になったときが、ひとつの落とし穴で失敗したり・・・。

経験っていう裏付けができて、本当に自信を持つまでは10年かかったんじゃないでしょうか?


_仕事で一番気を付けていることは何ですか?

お客様ひとりひとりの心に寄り添うことでしょうか?

なんと遺影にする写真の印刷機だそうです

ひとつの葬儀には、ご家族、ご親戚、近所の方など総勢20~30人ぐらい身内の方がいらして、それぞれ心の状態が違います。

突然のことで話もできないようなご家族の方もいらっしゃるし、心配性の方もいらっしゃるし、てきぱきと仕切る本家さんのような方もいらっしゃる。

その方々のそれぞれの立場にたって対応するようにこころがけています。

14年間の経験のなかでおそらく1000以上の葬儀に関わらせていただきましたが、本当にひとつひとつドラマがあります。

もちろん今でも最初にお家へ伺うときに不安と緊張感がありますし、ひと通り終わって遺族の方に「おかげさまで無事に終わりました」と言ってもらったとき、心からほっとします。


_最近では全国展開する葬儀屋さんが参入してきていますが、孝輝殿ならではのサービス、他社との違いは何ですか?

花輪の送り主を書くお札。右の機械から印刷します。

  「お札専用の印刷機」    ただ今、印刷準備中。

ひとことでいうと「地域密着型」だと思います。

そのために北上、金ヶ崎、奥州市圏内に葬祭センターと通夜会館あわせて8箇所を作りました。

もともと弊社は社長が仕出し屋を経営していて、冠婚葬祭の料理を自宅へ、会館へ届けていました。

ところが江刺は山間部も多く、せっかくの料理が崩れてしまったり、出来立ての美味しい料理も食べてはいただけない。

そこで今まではお膳を運んできたけれども、これからは会館を建てて、お客様を運ぼうと発想を変えて、仏事専門のセレモニーホールを建てたのが平成2年です。

おそらく岩手県では初めての葬祭センターだったと思うのですが、もともと仕出し部門はあったものの、葬祭センター自体が県内にないわけですからお手本にする会社がないわけです。

そこで、20代の頃から部落の葬儀一切を手伝ってきた・・という社長の同級生が葬儀部の責任者となり、試行錯誤しながら、今の孝輝殿を作ってきました。

ですので、原点は昔からこの地域に伝わる葬儀なんです。

「地域を大切にそれぞれの地域性に対応する」 そのためにも社長は、「ふだんから社員のひとりひとりが地域貢献することが大事だ」と話しています。


_最近では、葬儀事情が変わってきたというのはあるのですか?

「生前予約」といって、前もって葬儀の打ち合わせにいらっしゃるケースが増えたとは感じています。

金銭面も含めて家族にできるだけ迷惑をかけたくないと考えたり、「老いの準備の一環」という考えもあって、差し迫った葬儀の必要性はないけれども、自分の葬儀の打ち合わせを前もって行う方が増えてきています。

中には「遺影の写真はこれ使ってください」とか、告別式の席順表まで準備されている方もいます。



_生前葬などもありますか?

それはさすがにまだ経験ないですね。ただ弊社の社長が「あと5年たったら俺は生前葬を行う」と宣言していますので、最初の生前葬は社長になると思います。

にぎやかなことが好きで、「坂本冬美や美空ひばりのこの曲をかけてくれ」と言っていますので、かなり型破りな生前葬になるのではないでしょうか?

社長の生前葬の話は特殊なケースかもしれませんが、たとえば音楽の好きな方が音楽葬を希望したり、葬祭会場に故人の趣味の作品を飾ったりというケースはでてくると思います。

一方で昔は地域の葬儀を取り仕切っていた方がだんだんいなくなってきて、葬儀全体のコーディネートをするのも私たちの仕事になってきました。

いずれにせよ、ひとりひとりの心に寄り添って、「おかげさまでした」と言われる仕事をしていきたいと思います。


__葬祭センター 孝輝殿

仏事専門のセレモニーホール、だからこそのサービスがあります。

 

 

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